お前は何を望む

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 面接時間は十分。最短記録を更新した。少なくとも合否連絡は後日いたしますねと伝えられていた今までの面接先と比べても、最悪の結果だったといえよう。 「学業二級が要るなら、最初からそう書いておけばよかろう!」  急募! 資格不問! の広告に騙された。よくよく考えれば資格不問というのは建前で、言葉通り受け取るような愚かな応募者はいないのだろう――漠のような。  しかし、遠路はるばるやってきたというのに、完全に無駄足ではないか――肩を震わせ、いからせ、漠は静かな参道をぽてぽてと歩きながら、返してもらった履歴書を眺める。ちょっと端の方がしわになってしまっている。これでは、次の希望先に提出するのは心象が悪い。結局、ごみになってしまった。面接官のニヤニヤとした笑いを思い出し、履歴書に更なるしわが寄った。  それにしても腹が立つ。あんないやらしい言い方、しなくてもいいだろうに。相手は面接官だが、漠のほうが相当年上であるはずだ。相応の礼節というものがあろう。こんな神社、こっちから願い下げだ。  いからせた肩のまま、くるっと鳥居の向き直り、あっかんべーと思いきり舌を出した。その顔のまま、いざ出口へとふたたび前を向いた漠の正面で、ひとりの少年がぽかんとした表情で突っ立っていた。
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