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そんなことを考えながら俺は、東西に伸びる街道を家に向かって歩いていた。
猛吹雪の後ということもあり、人通りはおろか、車もごくたまにしか通らない。ぽつぽつと点在する街灯や自販機が、どことなく寂しい雰囲気を醸し出している。
しかし、街を囲む山々や広がる田畑、道路や地蔵までこうも真っ白で、さらに星も綺麗となれば幻想的でもある。
「それにしても寒過ぎるだろ~。おまけに雲一つないからまた冷えるんだろうな。とっとと帰ろ」
俺はもう一度空を見上げ、自分に話しかけるように呟くと、足を少し早く動かした。
五分ほど歩いて家も近づいた頃、俺は思わず足を止めた。
「な、なんだ!?」
最初は状況の理解に苦しんだ。何しろこの季節のこの時間帯に、着物姿で夜道を歩く人を、俺は今まで見たことがなかった。
それも金髪の美人だ。しかし何より俺には、その人が今「とても幸せそう」に見えたのだ。思わず寒さも忘れてその人に見入った。
相手も俺に気づいたらしく、何とも言えない笑顔で軽く俺に会釈して、側をゆっくりと通り過ぎていった。
俺は、その姿が雪景色に消えていくまでその場に立ち尽くした。
この時の俺に、なぜ着物の美人が幸せそうに見えたのか分かるはずもなく、俺は首を何度も捻りながら家路を急いだ。
吹雪の止んだ穏やかな静夜に起こった偶然の出会いは、全ての始まりとなる……。
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