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第一章~迎雪の静夜~
本当の「幸せ」
それは何なのだろうか。もしくは、どうあることを言うのだろうか……。いや、それ以前にそんなもの存在するんだろうか。
最近ずっと、そんなことを考えてばかりだ。
「はあ~っ、寒いなあ」
そう言って俺は、小降りになった雪が舞い降りてくる、暗い空を見上げた。
全く、やめてほしいものだ。昨日の天気予報では今週は気温が上がり、晴天に恵まれると言っていたのに、急な大寒波の影響で昼から猛吹雪。
夜十時を回った今、雪は小降りになったものの、街は完全に白銀の世界だ。寒さが苦手な俺にしてみれば、いい迷惑でしかない。
俺の名は天竺 葵。ここ雪華海街に生まれ育った十六歳の高校一年だ。
家族は父、母、そして兄と妹と言ったごく普通の家庭。友人もそこそこいるし、これといった大きなけがや病気もしたこともなく、今日まで特に不自由なく生きてきた普通の人間だ。
だからこそ分からない。
「幸せ」って一体何だろうか。そりゃあもちろん、言葉ではどうとでも言い表せるし、理想なんていくらでも夢見ることができる。
でも、俺が最近思っているのはそんなんじゃない。
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