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その時に返って来た言葉が、そうだ、「へその緒」だった。
俺が持っているこれも、誰かのへその緒だ。
「誰のへその緒だよ、これ」
俺の指先がへその緒に触れた瞬間、そこから赤ん坊の泣き声が聞こえた。
俺は怖くなり、とっさに桐の箱を閉じると、そのままコインロッカーに戻した。
「こんなものもらったって、どうしたらいいんだよ」
立ち去ろうとすると、背後からまた赤ん坊の泣き声が聞こえて来た。
そして、コインロッカーのドアがゆっくりと開いていくのが見え、俺は慌てて手でドアを抑えた。
中から、ギャン泣きする赤ん坊の声が聞こえる。
ドアが開く力は強く、今にも開いてしまいそうだった。
俺はとっさにポケットから小銭を取り出すと、投入口にコインを入れて鍵を閉めた。
ダンッダンッ!!
赤ん坊の声とドアを叩く音が何度か聞こえたが、少しして静かになった。
俺は大きく息を吐いた。
気づくと、鍵を持っている手が震えていた。
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