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翼が肩で息をしながら、私に握手を求めてきた。
「姉妹でワンツーフィニッシュだね!」
翼は本当に嬉しそうに笑った。
反射的に睨んでしまった。
どうすることもできなかった。
「……え?」
「……私は」
涙が出てきてしまう。
こんな小さな記録会で負けたくらいで、私はなぜ泣いているんだろうか。
「杏奈、どうしたの?」
翼も泣きそうな表情で私を見つめる。
「……何で、私が翼に負けるの?」
言葉にしてしまった。言葉にした瞬間に後悔した。
その言葉は、翼への嫉妬なのか、負けたことの悔しさからくるものなのか、私にはわからなかった。
その日、私たちは一言も口を聞かず家に帰った。
翼は隣に並んで座った帰りの電車の中でも、ただ気まずそうに下を向いていた。
スパイクやジャージを入れたエナメルが、やたら肩に重くのしかかってきた。
その重さが、はじめて持った翼への疎みだったと気づいたのは、家に帰って布団にくるまった時だった。
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