あの日の向こう

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部活を終えたあと、翼に先に帰ってもらって、美容院に寄った。 私と翼の行き着けの美容院に行くと、 「あれ? 今日は一人?」 と不思議そうにする。 「私だけです」 いつもは、翼と一緒に来て、同じ髪型にしてもらっていた。 小さい頃からの習慣だから続けているだけだったけど、いざ一人で髪を切りにくると、翼をだましているような気分になった。 「今日はどうしたの? 杏奈ちゃんだけ長くなっちゃった?」 私たちの担当美容師の小林さんは、いつものような営業スマイル。 あくまで、プライベートには踏み入らないようにする小林さんのスタンスは、今の私にはすごくありがたかった。 「……短くしたくなって」 私は鏡に映る自分を見ながら言った。 「へぇ、どれくらい切る?」 黙って、耳の下くらいを指差す。 「嘘っ! そんなに切っちゃうんだ。杏奈ちゃんの髪綺麗なのになー」 ほら見て、私なんて毛先パサパサ、と小林さんは自分の巻き髪の毛先を私に見せて笑う。 「……髪が重いのかもって」 「重い?」 「速く走りたいんです。もっと」 「……ふーん」 小林さんは肩をすくめて、私の髪を霧吹きで濡らし始めた。
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