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「なんで声かけてくれなかったの!」
私の短い髪をこれでもかと触りながら、翼は怒った。
「……たまにはいいじゃん」
翼とお揃いだったウィンドブレーカーも買い換えた。
私と翼は違うんだから。
ただ、髪を切っても服を変えても、なぜか私はうまく走れなかった。
いざスピードを上げようとすると、目の前でポニーテールが揺れるんだ。
私はそれを無理に追いかけようとして、フォームのバランスを崩したみたい。
毎日毎日、何回走ってもどう走っても。
昔のスピードを、体が思い出してくれない。
陸上部の顧問の先生は、「スランプ」の一言で私をまとめたけど、そんなんじゃないんだ。
私は翼に勝たなきゃ、走れないんだ。
でも今のままでは、翼には絶対勝てない。
翼はちゃくちゃくとタイムを伸ばしていたし、私はその背中を追いかけるので精一杯だった。
私は夜一人で走りながら、前を行くポニーテールをただ愚直に追いかけた。
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