あの日の向こう

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私と翼は一卵性の双子として生まれ、いつも一緒に過ごしてきた。 多分、ほかの兄弟姉妹と比べても仲がいいほうだと思う。 おへその横にほくろがあるのが翼。 翼と違って左利きなのが私。 小さい頃は何もかも一緒なのが嬉しくて楽しくて、よく入れ替わってみせて、両親にイタズラをしたものだ。 中学校に上がり、私は陸上部に、翼はテニス部に入った。 今思えば、私たちが違う決断をしたのは、はじめてのことだった。 一緒に陸上部の体験に行き、走ることに魅了された私に 「ただ走るなんて退屈じゃない? 杏奈って本当変わってるよ」 翼はたしかに、そう笑っていた。 きっと翼はあの快感が味わえなかったんだろう。 別に嫌な気持ちにもならなかったし、たまには翼と違う道を選ぶのもいいかと思った。 私たちは運動神経がよかったらしく、3年生の最後の大会で、私は全国大会の1000mで7位に入賞し、翼は関東大会のベスト8という結果を残した。 両親は私たちを同じように褒め、同じように祝ってくれた。 私たちはスポーツ推薦で同じ高校に進んだ。 県内でも有数のスポーツ名門校で、全国から選手を集めることで有名な高校だった。 事件は、入学してすぐに起こった。
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