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翼がテニス部を辞めること、そして陸上部に入ることを学校側はなかなか認めなかった。
最後には両親を交えて話し合い、翼はスポーツ推薦での授業料免除を解約し、陸上部に入ることを許された。
どうして、走ることに誰かの許可がいるんだろう。
私はそれが疑問で仕方がなかった。
翼は陸上部に入ると、メキメキと成績を伸ばした。
「いつも杏奈が走る姿見てたからさ。なんとなくコツがわかるんだ」
翼の速いピッチと、狭いストライドは、私のフォームにそっくりだった。
それが恥ずかしいような、けど純粋に嬉しいような。
私は長距離専門だったけど、翼は「スポーツは楽しむもの」をモットーに、短距離も長距離も、跳躍も投擲種目でさえそつなく、そしてレベルの高いところでこなした。
そして、悩んだ結果、翼は私に聞いたんだ。
「ねぇ杏奈、私、何を専門にするべきかな?」
キラキラした目に、私は素直に答えることしかできなかった。
「……長距離だと思う。私と一緒に走ろ」
翼に違う道を進めることはできた。
私の後についてこないでって言えた。
言えばよかった。
そうだよ、そうなんだ。
結局、私は私が決めたことに悩んで後悔して、そして、翼に負けたんだ。
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