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だが前の家を出る時に、大半を処分していた。それなのに和書に洋書にスコアに、いま目の前にあるこの本の山は、どういうことだろう。
「確かに増えてもいいように、本棚は大きいのを備え付けたけど。いきなり増えすぎじゃない?」
「わ、悪い。このあいだ本屋に行ったらフェアをやってて、欲しかった本がたくさん入荷してて」
「ふぅん、まあ、いいや。本は俺も読むしね。タイトル順? 作者順?」
「作者で」
「OK! これを片付けたら食事にしよう」
申し訳なさそうな顔をする宏武に笑みを返せば、少しほっとしたような表情を浮かべた。その顔が可愛かったので、今回のことは目をつむろう。
それにこの段ボール箱に、収められている本をすべて収納しても、まだまだ壁面いっぱいの本棚には余裕がある。
この先また宏武が本を大量に買い込んでも、大丈夫なくらいだ。部屋一つ一つに余裕を持たせてよかった。
「宏武、夕飯はなにを食べたい?」
「あ、まだキッチンもそんなに片付いてないだろう? なにか頼もう」
「うーん、そうだね。じゃあさ、ピザにしようよ」
「珍しいな、リュウがそういうの。いいよ、あとで一緒に決めよう」
「うん」
それから二人で黙々と本の仕分けをして、時折興味を惹かれるものに手を止めたり、ついつい読み込んでしまったり、しんとした中で作業を続けた。
しかしそれが三分の二くらい片付いたところで、二人とも腹の虫に負けてしまった。
壁掛けの時計を見れば、三時間くらい過ぎていて、顔を見合わせて頷き合うと、本を放り出してリビングに向かった。
越してきたばかりでチラシなどはないから、タブレットで検索をしてピザ屋を探す。
お腹が空いているから一番早く届く店を選んで、Lサイズのクォーターピザを頼むことにした。
「宏武なにか飲む?」
「空腹が紛れるものがいい」
「じゃあ、牛乳があるから、甘いココアとかにしようか」
「ああ、うん、それがいい」
宏武をソファに残し、キッチンへと向かった俺は、真新しい冷蔵庫を覗く。中身はまだほとんど空で、ここに来る途中で買った卵と牛乳、バターくらいしか入っていない。
荷物が片付いたら、買い物に行こうと思っていたが、食パンは買ってあるし朝の分は問題ない。
今日は行かなくてもいいだろう。
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