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「条件未達のため終了しました」 「あぁ……自信あったのに」 定型文の音声に嘆きが重なった。 「突出した才能がナイ、思慮ブカク引っ込み思案、な、女の子トシテ、高いレベルで、再現できていました。今回は誠に残念ですが、条件未達、のため不採用となります。この度はシミュレーションAIモブキャラオーディションにご応募頂き誠にありがとうございました」 頻出するであろう部分だけ滑らかに喋る合成音声を聞きながら、男は画面の中で静止したままの笑顔を睨み付けた。 「モブキャラごときに作りこみ過ぎたか……主人公を好きって点が最優先なのに、細かいこと考え込みすぎなんだよ!」 吐き捨ててから、ため息。 「いや……モブごときって意識が良くないよな、侮らずにひとつの人格として作っていかないと採用してもらえないんだ。よし、気を取り直して新しいモブキャラに取り掛かるか」 男の指先がパネルの上を動き、笑顔はぷつりと途絶えた。
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