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列に並んでいるのは女の子ばっかり。彼女に連れてこられましたってかんじの男の人が居心地悪そうにそわそわしてる。ほとんどの女の子は並んでいる暇をおしゃべりで潰していて、私も友達も、クラスの子たちも同じだった。見知らぬ隣の人の会話は聞こえるけれど、少し離れたところに並んでいるクラスの子たちの会話は聞こえない。私も友達も本当に話したいことは話さずに、どうでもいいことばかり話していた。頭は別のことばかり考えていたし、友達もきっとそうだったと思う。 いくらなんでもありえない。クラスの男女比が一対二だからって、隣のクラスにも違う学年にも男子はいるし、他の学校にもたくさんいるし、高校生じゃなくても男はたくさんいる。なんでみんなして一人だけを選んだんだろう。 ドラマや小説の世界でなら良くある話だ。王子様みたいなキャラクターが学校の女子全員から好かれていて、王子様に好かれたヒロインにいじわるするやつ。でも、こんなのフィクションだ。フィクションだから顔も性格も家柄も頭も運動神経も良くて、だからみんな憧れるんだ。 あの人は、顔は悪くないけど芸能人ほどじゃなくて、性格は良いと思うけど、家柄は分からなくて、勉強は中の下、不得意な科目はビリから三番目くらい、運動神経は悪くないけど部活やってるわけじゃなくて、部活でエースやってるような人には普通に負ける。 悪い人じゃない。でもヒーローじゃない。みんなどうしてこんなに好きになったの? 私は? 私はどうしてあの人のことが気になったんだろう。
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