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私は表面上それなりに笑顔で乗り切ることはできるけれど、誰かと仲良くなるというのが苦手だ。学校生活はいつも友達と二人で行動している。女子相手ですらそれなのに、男子なんてもっと。
そんな私にもあの人は話しかけ続けてくれて、最近は友達と同じくらい気を使わずに話すことができるようになってて、仲がいいと思ってた。
優しいから、構ってくれるから好きなのかな。
冷静に考えると、いや冷静に考えなくても、あの人は誰にでも話しかけるし、誰にでも優しい。友達に話しかけてるのも見てたし、クラスの他の子と楽しそうに笑ってるのも見てた。特別に好かれてると思えたことはない。
特別扱いじゃなくても平等に優しくしてくれる部分が良かったのかな。確かに嬉しかったけど、好きになるほどのことだったのかな。
誰にでも好かれるほどのことを、誰にでもふりまくことができるのはすごい。
私には一人に好かれるのも難しい。仲のいい友達もたくさんは作れなくて、今が精一杯なのに。
あの人はすごい。すごすぎて、こわい。
人を好きになるのに理由なんて要らないよ。
って、私の中の私が言う。
だから、好きになるのやめるのにも、理由なんて要らないよ。
って、私の中の違う私が言う。
私たちの前に並んでいたスーツ姿のお姉さんが財布を握りしめているのを見て、私は始まりかけた恋が始まる前に終わったことを知った。
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