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闇も深くなった夜。ベッドの中で、双子は囁きあっていた。
「この街はハズレみたいね。噂が広まるのも早いし……」
「しょうがないよ。結構派手にやってるから」
「明日にはここを出ないとね……おやすみ、リヒト」
「ああ。おやすみ」
ルミエがすやすやと寝息をたて始めたのを確認して、リヒトは寝返りをうった。
(大丈夫。まだ、ルミエは大丈夫)
目を閉じれば、思い浮かぶのはあの時の光景。
真っ赤な血溜まりに横たわる母。
どこかの組合であろう紋章が入った、青いマントの男達。
暗い闇を瞳に宿して、復讐を誓うルミエの姿ーー
母を殺された。自分も憤っていた。
しかしそれ以上に、たった1人になってしまった家族が、生まれた時からずっと一緒の片割れが、堕ちてしまいそうで心配だった。
ルミエがあちら側へ行かないように、リヒトは一緒に復讐の旅をする。
昼間の笑顔、さっきの夕飯での笑顔。
(大丈夫……美味しいものを食べて、笑えるうちは、ルミエは大丈夫だ……)
夜は、静かに更けていった。
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