<最終話>

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『先生……』  千穂と小鳥が、ドアの故障で病室に閉じ込められた事故の後。病院にすっとんできた門倉に、小鳥は言ったのである。 『友達って……なんなんでしょうか』  本当は何があったのか――門倉はついぞ聞くことができなかった。そして、彼女の問いに答えてやることも。そもそも彼女がどんなことを期待して自分に問いを投げてきたのかも。 ――なんなのかなんて、大人の私だってわからないんだよ。ただ。  オレンジ色に染まった窓の向こうを見つめて、門倉は呟く。 「きっと……ただひたすら、尊いもんなんだろうさ……」  ***  元より、大した怪我ではなかった。精神が不安定になっている、ということで少しばかり長めに入院したにすぎない。 「なにはともあれ、元気になってくれて良かったよ、千穂」 「うん……」  小鳥は千穂の隣で笑っている。夕焼けが照らす住宅街――学校の帰り道。三人だったのが、二人になってしまったこの時間。小鳥が無理をしているのは明白で、千穂はなんと声をかけたらいいのかわからずにいた。  病院での一件から、二週間。美紅の言葉を聞いて、自分達は仲良く気を失い――気がついた時には、病室のドアが壊れて何時間も閉じ込められていたことになっていたらしい。暴れたり吐いたり凄まじい有り様だったゆえ、かなり両親には心配されたようだった。  彼らの様子を見てしまえば、とても本当のことなど言えるはずもない。そもそも時間がたてばたつほど、自分達が見たのが本当に美紅の幽霊であったのかさえ曖昧になってくる。  二人揃って同じ夢を見る、なんて現象が本当に起きるのならの話だけれど。 ――千穂は、あたしを恨んじゃいなかった。  あの時は怖くて仕方なかったのに。命乞いさえしていたというのに。  こうして何事もなく日々が過ぎていくのを感じれば感じるほどわからなくなってくる。自分は本当に生きていて良かったのか。死ぬべきだったのは美紅ではなく自分だったのではないか。  本当にこれで、この結末で正しかったのだろうか――と。
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