雪山

4/8
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
最後の雪山ということで、参加人数は5名で上級者。 雪崩さえ注意すれば、さして大変な事はない。 慣れた山である上に、次回に新人たちを連れて登るための下見の意味もあった。 ・・・のはずだったが、風向きが変わった。 急な天候の変化で、あるはずの無い視界ゼロの猛吹雪。 用心のため互いの体をザイルで結びあって、ゆっくりゆっくりと下山を始めた。 急にがくんと腰が引かれた、と思うと足が宙に浮いたのが解った。 しんがりの奴が滑落して引っ張られたんだ。 ピッケルを壁面に突き立てる。 重い・・。 ずるずるとそのまま滑り落ちて行く。 上の奴を巻き込まないようにザイルを切った。 「おーいおーい」 呼んでみるがしんがりの奴の声は聞こえない。 ある程度足場を探して、踏ん張れる場所をみつけて、下のザイルをひっぱりあげる。 急にザイルは軽くなり、切られている端が手元に来た。 上も下も横もただ真っ白い雪で視界がきかない。 落ちた場所は解っているはずだ。 後は信じて動かないで体力を温存するしかない。 窮屈な狭い足場に雪で急ごしらえの雪よけを作り 寒さを防いでうずくまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!