6人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
最後の雪山ということで、参加人数は5名で上級者。
雪崩さえ注意すれば、さして大変な事はない。
慣れた山である上に、次回に新人たちを連れて登るための下見の意味もあった。
・・・のはずだったが、風向きが変わった。
急な天候の変化で、あるはずの無い視界ゼロの猛吹雪。
用心のため互いの体をザイルで結びあって、ゆっくりゆっくりと下山を始めた。
急にがくんと腰が引かれた、と思うと足が宙に浮いたのが解った。
しんがりの奴が滑落して引っ張られたんだ。
ピッケルを壁面に突き立てる。
重い・・。
ずるずるとそのまま滑り落ちて行く。
上の奴を巻き込まないようにザイルを切った。
「おーいおーい」
呼んでみるがしんがりの奴の声は聞こえない。
ある程度足場を探して、踏ん張れる場所をみつけて、下のザイルをひっぱりあげる。
急にザイルは軽くなり、切られている端が手元に来た。
上も下も横もただ真っ白い雪で視界がきかない。
落ちた場所は解っているはずだ。
後は信じて動かないで体力を温存するしかない。
窮屈な狭い足場に雪で急ごしらえの雪よけを作り
寒さを防いでうずくまった。
最初のコメントを投稿しよう!