0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
川上和歌
人には魔が差すということがある。
それは宇宙人にも当てはまる。
なんでそんなことを言い切れるかといえば、あたし――川上和歌がバニー星人だからだ。
バニー星人には、全裸で月光をあびながら踊る風習がある。
今晩の満月があまりにも見事だったから、バニー星人としての本能が抑えきれなくてついやってしまった。
人気のない河川敷で見事にすっぽんぽん。
全裸で踊るのは無茶苦茶気持ち良かった。
普段は窮屈に隠している長耳まで露出していたのだから開放感は半端ない。
でも、それが良くなかった。
目撃されてしまったのである。
よりにもよっておなじ高校に通う山田剛くんに。
「きゃっ」
留学中に身につけた地球人としての常識が、あたしに身体を隠させる。
「山田くん、なんでこんなとこいるのよ!?」
「いや、たまたま?
そういう川上だって、なにしてたんだ。そんな格好で?」
あたりまえのことをあたりまえのように聞いてきた。
どうしよう。
地球に宇宙人が来ていることを知っている人は知っている。
留学の手続きをしてくれたのは、この国の政府の人だ。
でも、無用な混乱を避けるため、まだ一般人には知らされていない。
つまり、あたしが宇宙人であることは秘密なのである。
手引きをしてくれた人たちに迷惑をかけないためにも、ここであたしの正体は隠し通さなければならない。
「実はあたしね、バニー星人なの!
だから、こうして月夜の晩には思わず全裸で踊っちゃうのよ。てへっ」
しまった、全然ごまかせてないよ!?
種族特性とはいえ、なんてプレッシャーに弱いんだあたし。
最初のコメントを投稿しよう!