こちらの世界

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葵は、兼を送り出すと、洗濯と掃除をはじめた。その間練は、瑞希の相手をする事になった、瑞希はスケッチブックと、色鉛筆をもってくると、お絵かきをはじめた。何かをかいては、色鉛筆でいろを塗っていく、練もお手本のつもりで、何か描いてやろうと [瑞希くん、俺にも色鉛筆を、ちょっとかしてくれない?] というと瑞希は笑顔で、こう言った [じゃあ、対価ちょうだい。] 練は、その言葉にびっくりする (子供なのに、対価を要求するんだ、小さくても悪魔なんだなあ。) そう思うと、練は瑞希をしげしげと見つめ、質問した [対価はなにがいいの?] すると瑞希は [その時計がいい。] そう言って練の左手首にはめられた、腕時計を指差す。 [これは無理だなあ。俺が時間わからなくなっちゃうから。] 練がそう言うと、瑞希は [じゃあ、それ。] といって左手首のブレスレットを指差す、練は首を横にふりながら [これもダメだなあ、これはまだ買ったばかりで、大事なんだ。] そう言うと瑞希はしばらく考 え込む、すると真顔になり淡々と [じゃあ、命ちょうだい。] といった。練はその言葉を言ったときの、瑞希の雰囲気を感じ、背筋がゾッとした。 練は葵の姿を探すが、葵は二階の掃除中で、近くにはいない。もう一度瑞希を見ると、いつもの雰囲気にもどり、スケッチブックに色鉛筆で、絵を描いている。練はその様子を見守りながら、この時あらためて (瑞希も小さい子どもだけど、悪魔なんだな。) そうおもった。 葵は、洗濯と掃除を終えると [それではそろそろ、出かけましょうか、瑞希を幼稚園へ送った後で、病院へ行きましょう。] そう言うと、支度をはじめた。練も二階の部屋へ行くと、コートと帽子をかぶり準備をする。 練は腕時計を見ると、八時四十分だ。三人は家の外へでると、葵が車庫からだした車へと、のりこみ出発する。 葵は運転しながら、練に話しかける [先ほどはすいませんでした、瑞希が変なこといってたでしょ?] そう言うとバックミラーを見た。練は後部座席だ。練は[聞こえてたんですか、びっくりしましたよ、まだ小さい子どもなのに、命ちょうだいと言うんで。]     
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