こちらの世界

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練はゆっくりと、診察室へはいると、そこには三十歳ぐらいの医者が、椅子に腰かけていた。医者は [どうぞ、座って下さい、コートはぬいでくださいね。] そう言いながら、姿勢をただした。練は、コートと帽子を脱ぐと、近くのかごにいれ、目の前の椅子へすわり[よろしくお願いします。] そう言って医者をみる。 [今日はどうしました?] [少し熱があるんですが、たぶん風邪をひいたと思います。] [そうですか、それでは治療を始めますね。] 医者はそう言うと、診察もせずにいきなり右手を上げる。練は突然のことに、その右手を見ながら (何をするんだろう?) 不思議におもっていると、医者はゆっくりと呪文をとなえはじめた。しばらくすると、右手が金色に光はじめる (光ってる) 練は右手を見つめながら、緊張でこぶしをにぎる、すると医者は、その右手を練の額へとあて、また呪文をとなえはじめた。 今度は練の体全体が、金色の光に包まれた。練は (なんだか暖かいなあ、いい気持ちだ。) そう思いながら、目を閉じる。しばらくして医者は [はい、治療はこれで終わります、お疲れ様でした。] そう言うと、右手を額から離した。練はゆっくりと、目を開けると、金色の光は消えていた。 (なんだか体調がいいなあ) 練はそう思い、医者に質問する [あの、もしかしてこれで治ったんですか?] すると医者は [そうですよ、もう大丈夫ですよ、完治です。] と答えた。練は、奇跡を体験したような気分がし  [ありがとうございました。] そう言うと、足取りも軽く、診察室を後にした。     
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