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どうアクションして注意を引こうか慧斗が迷う間に、彼は停止した自分の車を発見したよう。石畳をゴロゴロと転がる小ぶりのスーツケースの音が、遠くからでも聞こえてくる気がする。下ろしたウィンドウの向こうから、乾の顔が覗いた。
「よかったよ、無事に着いてくれて」
「お帰りなさい……」
お互いの第一声が噛み合わなかったのは、上手い冗談を返すことができなかった自分のせいだろう。
「ただいま」
乾はことさらそれを指摘することなく、語尾を小さく弾ませるように答えて、頷いてくれた。スーツケースと脱いだコートをトランクに入れると、運転席には回り込まずに助手席のドアを開ける。
「よろしく」
あくまで慧斗をドライバーに専念させる気らしい。ゆっくりと丁寧に車を発進させたつもりだが、乾は及第点を出してくれるだろうか。彼は助手席のシートを後ろへ動かしながら、気の抜けた声を出した
「一週間ぶりなんだよなあ。なんか、損したっつーか得したっつーか」
「うん」
二度のワープを行った、率直な感想なんだろう。会えない時間が長かったのはこっちのほうだ、なんて恨み節みたいなこと、口に出したりしないけど。慧斗が代わりに吐き出したのは、一週間分の思いを込めた、楽になるための短い呪文だった。
「すいませんでした」
「んっ?」
少しの勇気を必要とした謝罪を、不思議そうに聞き返さないでほしい。
「こないだ。憶えてないなら、いいけど……」
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