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 中から取り出した物をレジ台に叩きつけるように置いた。パンッ。 「ちょっと早いんですけど、よかったら」  ビニール袋を引ったくると、彼女は足早に店を出て行ってしまう。一緒にいた子、外で待ってたのか。なんて思いながら、慧斗は女子高生二人組が、小走りに夜の向こうに消えて行くのを見送った。  淡いピンクの包装紙に、小さな花の飾り。長方形の箱は、手のひらにすっぽり収まるサイズだ。 「――あぁ。そっか」  レジの真正面にあたる棚にも、コーナーを設けてあるんだっけ。おあつらえ向きに包装された、さまざまなチョコレート。明日が終われば、それらのほとんどは割引のセール品になる。 「ケイト、鈍っ」  斜め後ろを振り向くと、同僚の泰祐が呆れ顔で立っていた。  慧斗の定休日で、乾が曰く強硬手段で有給を取った日。世間で言うところのバレンタインデーは、早朝、まだシフト明け前から深々と雪が降る、寒い一日になった。  店を出ると、駐車場の脇にはでこぼこの白い層が数センチできていた。欠伸の息が、煙のように大きく広がる。一番端に停まっている車の排気口からも、真っ白な煙が噴き出しているのが見える。助手席のドアを開けると、乾が苦笑いで迎えてくれた。 「お疲れ。寒いから、取りあえず乗って、閉めようぜ」     
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