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 素直に納得する慧斗に、あてが外れたよう。乾の、些細だが性質の悪い所だと思う。名指しされているのと同じことだと気づかなかった自分も、鈍感だけど。今さら照れようとする身体から抗うように、慧斗は前髪を引っ張った。 「じゃなくて。ほんとはちょっと困ってて。指輪とか、俺、してんのになって思ったんだけど」 「してない時も多いからじゃない?」 「そ……」 「いやごめん、続けてください」 「いいですよ別に……もう」 「ごめんごめん、口挟まないから。ちゃんと聞くよ」  左手の薬指が、今日は空いているのは確かだ。在り処はわかっている。ネックレスのチェーンに通すのが気に入って、最近は首からかけていたところ、今日はそのネックレスをし忘れたという真相。昨日までしてたのに、なんて威張ったって仕方ない。肝心な時にし忘れない乾のような人からしたら、大差ないのだろうし。  慧斗は左手の甲を擦りながら、もごもごと口の中で言った。 「俺はひとのものですけど、恋愛って、そういうもんだったなあって……思った、だけです」 「うーん。深い話になったな、なんか」  くぐもった声、笑ってる。 「忘れてください」  急激に恥ずかしくなって、ごまかせる勝算もなくFMラジオの局番を変えた。パーソナリティーのフリートークに代わって流れてきたのは、流行りのJ-POPだ。     
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