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「来週日本にいないっつーの、なあ」
「……もう寝たら?」
落ちそうで落ちない目蓋の隙間から慧斗を見上げるだけで、乾はイエスともノーとも言わない。繋がった手を持ち上げると、離れることなく彼の手までくっついてきて、慧斗の太腿の上に揃って着地した。指と指が絡まる。
少し屈み込んで乾の顔を窺い、そのまま距離を縮めて唇を重ねる。無抵抗の唇を軽く吸って、離す。
「乾さん……」
「ん?」
「今日は帰るよ」
穏やかに脱力していた彼の表情が、わずかに引き締まったかもしれない。
「なに、どうした」
「や、べつに」
予想より反応が真剣だったせいで、しどろもどろな答えになってしまった。
「雪、降って来たから」
「なんで。雪降ったから帰るって……そんな昔話あったっけ?」
慧斗の言葉に何かのメタファーがあると思ったのか、乾はしきりに訝しがる。そうじゃない、と首を振って、繋いだ手を彼の胸の上に導いた。
「つーか……今、俺必要ないし」
ふっと握力が弱まり、慧斗の手が解放される。乾は身軽に半身を起こすと、酷い失敗をしでかしたような声を出した。
「あー……ごめん」
それから、酷い失敗をしでかしたような渋面を、片手で覆う。
「嫌な気分にさせてたな、俺」
「え、ちが……」
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