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「あの」 「はい?」 「明日って、お休み、ですよね?」  少しおどおどした、それでいて決め付けるような付加疑問形。釣り銭を返し、ビニール袋を差し出す寸前のタイミングだった。年中無休、二十四時間営業のコンビニの営業日をまさか尋ねるものではないだろうと思いながらも、 「……俺?」  自分の胸元を指差すリアクションで正解かどうか不安がよぎる。うん、と頷く仕草は、慧斗を勇気付けるように力強かった。 「休み……ですけど」 「やっぱり」  敬語を呑み込んで答えると、彼女はほっとしたような笑顔を見せる。  週に数回、来店するのは決まって十時過ぎの、予備校帰りと思しき女子高生。店内で目にする比率の一番高い、私立高校の紺色ブレザーだ。  夜勤シフトのメンバーは少人数だし、それでなくても店員である以上、一瞬であれ客から注目される立場にある。こちらが憶えているくらいだから、相手に顔を憶えられても不思議はない。疑問なのは、何故、今、シフトの確認をされているのかということだけだ。回答を待つ態度の慧斗に気づいたのだろう、彼女は勢い良くブレザーの左ポケットを覗き込み、 「あの、これ」     
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