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「そんな事を言ってる場合か? 女遊びと酒で町の住人からも苦情が来てるだろ。これ、放置できないって」
「タガを外しやがって。酔って酒場の女性にセクハラなんて、情けない事を」
「お戯れで済んでるうちに締めに行かないとな」
暗府の監査からの報告を読み直したランバートは、すぐに一週間の出張の予定を組む。幸い書類仕事は日々片付けているから急ぎのものはない。一週間くらい空けても問題はないだろう。
「お前が行くのか?」
「え? あぁ、そのつもりだけど」
「俺も行く」
ふて腐れた子供のような顔をして睨むファウストを見て、ランバートはキョトンとする。そもそもランバートが動く理由が、ファウストがもの凄く嫌そうだからなのだが。
「俺とファウストで行くのか?」
「あいつとお前を二人だけで引き合わせたくない」
「あの、なんで……」
「そういう相手なんだ。特にお前が俺の恋人と知っていれば、絶対に何かしでかす」
「いや、そんな」
それを知ってあえて手を出す人には、会った事がないんだが……
だがふと思った。実はこの砦にいく途中に、二人で初めて行った温泉地があるのだ。
ランバートの風邪などもあって、二人とも戦後の休みはあってないようなものだった。寂しいという気持ちも多少はある。だからこの機会に短くても旅行というのは、いいかもしれない。
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