前編

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 ARATAこと、山谷新太は俺の二つ上の兄貴で、某私大の一年。そして格闘ゲームのプロゲーマーでもある。奴は筋金いりのゲーマーで小さい頃からそれこそゲーム一色で生きてきた。教育ママである、超うるせーうちの母親を敵にまわして一歩も譲らず、ゲームをやりこんできた根性は称賛に値する。  その母親から成績は落とさないことでゲームをやる譲歩を引き出し、最低限の勉強で附属小学校から大学までの進学エスカレーターを乗りきりやがった。結構要領もいいんだよな、あいつ。俺が通っている高校は、中学受験してはいった男子進学校だから、大学受験は不可避。文化祭が終わったら勉強に本腰をいれなきゃいけない。  なんてことをぼんやり考えていたものの、さすがに前に進まなすぎてちょっとあせる。新太は時間にキッチリしてウルサイ。  小学生のころから大人たちのコミュニティに混じって格ゲーをやって来た新太は、社会の基本的規律を守らないゲーマーは結局疎まれ、実力云々以前に消えていったのを見て、反面教師にしたらしい。  だから時間はしっかり守る。一方で守らないヤツにはかなりうるさい。因みに俺は昔から時間にちょっとルーズだから、新太にいつも怒られまくってる。  新太のほうが正しいのは重々承知。だけどあの妙にクールな、超ムカつく上から目線で文句を言われると、我慢できなくなってピッキーンと逆ギレしちゃう。     
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