21人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
これ以上聞きたくなかった。傷つきたくなかった。
もしかしたら何か事情があるかもしれない。
まだ決めつけるには早いかもしれない。
就職をする前の僕なら、もう少しは冷静だったかもしれない。
しかしブラック企業に勤め、精神が弱りつつある上に疲労も溜まっている。
頭もうまく回っていない。
そこに一番大事にしている彼女の浮気の発覚。
僕が壊れるには充分すぎた。
僕はスマホを握りしめたまま友人の家を飛び出て走り出した。
そこから無我夢中……いや無意識の中走った。
ふと気づいたら僕は赤信号で止まっていた。
周りは飲屋街で人通りも深夜にしては多い。
息が上がっている。目の前には車が何台も走っている。光る赤信号。
目の前の景色は驚くほど静かに見える。
しかし自分が興奮状態にいることがわかる。
静かな景色と興奮状態の意識。
そして生きる希望を失ったことを思い出した。
僕は赤信号に導かれるように足を進めた。
右からくるトラックに轢かれた衝撃ですら静かに感じた。
僕は横たわっている。
消えかかる意識。
轢かれた衝撃は僕に冷静さを戻してくれたようで、頭に水をかけられた気分だ。
僕はちょうど視線の先にあるスマホの画面を見た。友人と恵からの着信があったことを伝える通知が来ていた。
同時に現在の時間と日付が目に入った。
2019年4月1日 2:37
これが人生の中で最期で最大の発覚だった。
最初のコメントを投稿しよう!