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僕の彼女は少し変わっている。学校の制服の上から、黒いローブを羽織って道を往来するような子だ。その往来とは、辞書に載っている意味そのままに『道を行ったり来たり』している。意味もなく。そして唐突に腹を抱え、背を丸め、誰にも気づかれないくらいの声で、クツクツと笑うのである。それは、彼女の中で何か面白い事があったからこその行動なのだけれど、見知らぬ人々はきっと、彼女の事を怪しい人間だと思っているに違いない。
彼女は唐突に奇声を上げる事がある。その光景は、見知らぬ人々の目には病的に映るが、僕の瞳には、どうして彼女が奇声を上げているのかが分かる。きっと今、校門前で奇声を上げてクルクル回っている彼女は、とっても喜んでいる。いったい、彼女は何に対して喜びを覚えているのかと考えながら、僕は教室の窓の頬杖をついて、色んな人に避けられ、それでも気にする事なく素直に感情をあらわにしている彼女を微笑ましく見守っていた。
そんな彼女だが、僕の前ではきちんと女の子の仕草をする。バレンタインデーなんてイベントに対し、彼女が素直に便乗する事には驚かされたが、もじもじと頬を染めて、小さな箱を渡してくれる今の姿は、どこにでも居る女子高生と相違ない。
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