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1話
病室に始澤一馬と秋野愛奈がいた。
愛奈は重い病気のため入院していた。
身体は痩せ細り、頭部に髪の毛はなかった。
「大丈夫だ。いつか治る」一馬は励ます。
愛奈は黙ったままだった。
「…一馬、私と別れて」愛奈の突然の発言に一馬は一瞬頭が真っ白になる。
「何を言っている?」
「私はもう助からない。だから私と別れた方が一馬は幸せになれるはず」
一馬は嫌だった。
しかし愛奈が本当に望んでいるならせめてこの願いだけでも叶えてあげてもいいんじゃないかと一馬は考える。
そしてしばらく考えた結果、一馬は決意する。
「………分かった…別れよう」一馬は部屋から出ていった。
夕方、一馬は公園で泣いていた。
愛奈と別れるのは嫌だったがしかし愛奈が望んでいるならせめてその望みを叶えたいと自分で考え決意したというのに一馬は複雑な心境だった。
そして本当にこの選択が正しかったのかも分からなかった。
その時電話が掛かって来た。
それは野球チームの仲間からだった。
一馬は無視をした。
それから3年後、一馬は普通の大学生活を送っていた。
愛奈からはあれから一切関わりはなかったため安否の方も分からなかった。
一馬は愛奈が今どうしているのか気になった。
しかし愛奈の望み通りにしたとはいえ、あの状況で別れた自分が愛奈に会いに行くのは抵抗があった。
夜、一馬が家に帰っていると目の前に光のドアが現れた。
そこから突然、天使が出てきた。
一馬は驚く。
「あなた、未来の世界に興味はありますか?」天使は聞く。
「……そうですけど」一馬は下を向いて言った。
「あなたを特別にもしもの世界に連れて行ってあげます。ただし未来の仮想現実ですが」
それを聞いた一馬は思わず顔を上げる。
「どういう事だ?」
「私はかつて何人もの人間をもしもの世界に連れて行き色々な経験をさせてきました。しかし今回はあなたを見て特別に未来の仮想現実の世界に連れて行ってあげようと思いました。」
一馬は嘘だと思った。
しかし現実世界に突然天使が現れた事を考えると未来の世界に行く事も可能だと思った。
「あなたはしばらく別世界でその疲れを癒すといいですよ」
すると天使は手から光線を出す。
気付くと天使はいなかった。
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