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「なぁなぁ。おまえ、この前の日曜さ。駅前歩いてなかったか?」  ちょうど弁当の卵焼きを食べようとしていた時、一緒に教室で昼飯を食べていた鈴木がそんなことを聞いてきた。  早々に手持ちの弁当をカラにした鈴木は、マヨネーズとチーズたっぷりのソーセージパンに食らいついている。食べ盛りの高校生。食べても食べても腹が減る。稀にその恩恵に預からない奴もいるけれど。つまり、俺だ。 「おー。いたいた。なんで?」 「なんかキレーなオネーサンと歩いてんなーと思ってさ」 「身内綺麗とか言われても、反応に困るわ」 油っぽい卵焼きを何とか飲み込んで、お茶にペットボトルをあおった。 「あ、やっぱ身内。よかったー。今流行りの危ないバイトでもしてんのかと心配しちゃったヨ」 「嘘つけ」  顔も声も確実に笑ってる。 「まぁ。それは冗談だけど。どことなーくおまえに似てんなぁって思ったんだよな」 「荷物持ちしたら欲しいもん買ってやるっていわれたからついてった」 「あるある。旨味ないといかねぇよな。でも俺それでも荷物番でそこらで座ってんもん。一緒に歩きたくねぇわ」  恥ずかしくね。と笑った鈴木に、たしかに、と思う。 「まあ、でも俺は一緒に歩くのはいいかな。ただ俺の知らない知り合いに会うのとかマジ勘弁。向こうが話盛り上がっても俺覚えてねぇし、大っきくなったわね~って言われても、大きくなんに決まってんじゃん」 「確かに。まだ縮まんわ」  声を上げて笑う鈴木は、いつのまにか「特大」の謳い文句がついていたパンを食べきっていた。早食いめ。俺の方は卵焼きから進んでない。鈴木のせいだ。 「はーうちもお前んとこぐらいキレーだったら良かったのになー」 「はっ。馬鹿め。化粧落としたら俺とおんなじ顔してんぞ」  男女の差と一回り年が違ってようがベースは同じ。げに恐ろしきは血縁関係。さらに恐ろしきは化粧の力。毎朝毎朝、出社前に一時間近くせっせと塗りたくっているのだ。それなりの成果を要求して当然である。因みにそのせいで洗面所が使えず、俺の歯は度々尊い犠牲になっている。
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