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仁保に出会った日のことは今も鮮明に覚えている。お互いに小学一年生の時だった。
仁保の一家と八千代の一家は道路を隔てて向かい合わせに住んでいた。
「ちょうど、私と同じ歳くらいの女の子が住んでいる」
八千代はそれが嬉しくて、すぐに仁保に声をかけた。二人は自然に仲良くなり、よく一緒に遊んだ。それがきっかけで、親同士も親しく付き合うようになった。
ある雨の日、八千代はぬかるみに足を取られて、転んでしまった。それに気づいた仁保がすぐさま、駆け寄り、八千代を救い上げてくれた。
遠い記憶だった。しかし今でもあの日の出来事の断片は鮮やかに思い描ける。泥だらけで濡れていた自分。駆けつけてくれた仁保の優しい笑顔……。その日から八千代は仁保を慕った。八千代にとって、何でも話せる親友は仁保だけだった。
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