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商店街の路地を入るとすぐに八千代の勤める『ローズ』の店の看板が目に入る。『ローズ』は甘い紅茶の香りとエレガントな雑貨たちに誘われて人々が集まってくる、『憩いの広場』のような雑貨店だ。
窓からの陽光がふんだんに取り入れられた店内にはバラやスミレなどの花柄の食器が棚にお行儀よく並んでいる。店内にはカフェスペースがあり、三つのテーブルが置かれている。店長の渡部町子の案で、ゆったり腰掛けて棚に並べた商品を眺めながら、紅茶とケーキを味わえるという、お客様への配慮である。ここで初めて出会ったお客様同士が意気投合し、ガラス器談義に花を咲かせることも多々、ある。
店内にはオルゴールの音楽が流れている。この店の優雅な時間の裏には、店長である町子の強い意志と実行力と細やかな配慮が感じられる。そんな町子を八千代は社会人としても女性としても尊敬していた。
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