突然の病気

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「子宮は全体として大きくなっていて、内部には所々に暗紫色の斑点が見られるの。対処療法もできるけれども、基本的には根治治療は子宮全摘しかないらしいわ」 仁保の目の端には涙が流れていた。 「自然に退縮するってことはないの?」 「ええ、ないわ。森行さんにもそう伝えたの。子宮全摘のことを話したら、赤ちゃんは諦めるしかないけれども、仁保の体の方が大切だって言ってくれたの」   八千代は何と言っていいかわからず、目の前の仁保を見つめていた。 「でも子宮全摘って……。挙児の希望があるのならホルモン療法などで子宮を温存できないの?」 仁保はマグカップを手に取り、熱いコーヒーを飲み干した。 「月経痛が辛いのを、エストロゲンを抑えるホルモン療法で閉経状態に持って行くこともできるの。でもそれでは赤ちゃんを見ると、ホルモン療法をしている自分を責めてしまいそう。赤ちゃんを生むためにホルモン療法を止めると、今度は酷い月経痛に悩まされる。医師の話だとその繰り返しで虚しく時は過ぎて、この状態を『ホルモン療法のジレンマ』と言うそうよ」 八千代は悲しくなり、目を伏せた。 「病変を局所的に取る方法はないの?」 「『子宮腺筋症核出術』というものがあることは聞いたけれども……。病変を確実に取ることはできなくて、再発する可能性もあるの。その手術をした後、妊娠したら子宮破損した例もあるし……。おまけに『子宮腺筋症』という病気がまだ世間に知られていないせいか、保険も利かないのよ。医師には『あまりお勧めではない』って言われたの」  淡々と語る仁保の両目からは涙が溢れ出ていた。八千代は胸が押しつぶされそうになった。  
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