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背後でドアが開く。
「生体反応はしっかりしていますよ。今のところは患者さんはよく頑張っていらっしゃいます」
看護婦が入ってきて、八千代を励ますように語り出す。八千代は今はその言葉で満足するしかなかった。
山口仁保が滑るように入室してきた。白色のブラウスに紺のスカート。栗色の髪は 短く、顔は白く透き通っている。
「邦彦さんが車に轢かれて、ここにいるって聞いたから……」
仁保の肩は小さく震えていた。混乱している感情を必死で飲み込んでいるように見えた。
「ええ。これから医師の話を聞いてくるわ。悪いけど、仁保。邦彦さんをお願い……」
八千代は自分の無力さに苦悶していた。不吉な予感が胸によぎる。八千代はそっと廊下に出た。
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