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「田島邦彦さんですが、正直申し上げて状態はかなり深刻です。ひどい事故でしたし、発見も遅れ、時間もかなり経過していて……。怪我だけでなく、大量の出血と外気にさらされた影響も心配です。この三日間がヤマでしょう。奥さんも大変かと思いますが、ただ待つ以外、どうしようもありません」
診察室に入ると、早速医師にそう説明された。八千代は首を振る。
「いいえ、私は邦彦さんの奥さんではありません」
意外な言葉を投げかけられ、医師は二の句を失っているようだ。
「と、言いますと?」
「別れた恋人なんです。今は何の関係もありません。ただ彼の手帳のアドレス欄に私の名前があったらしく、連絡があったのです」
思考がぐるぐると八千代の頭の中を回った。空調の利いた診察室で八千代はぼんやりと窓の外を眺めた。カーテンのすき間から見える空には遠くに雲が流れていた。
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