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あの日も二人で並んで歩き出した時、八千代が空を見上げると、大きな雲が浮かんでいた。
喫茶店に入り、八千代はカフェラテを喉に通して一息ついた。店内のBGMが切り替わったタイミングで、邦彦はコーヒーカップをテーブルの上に置き、なぜか苦渋の表情を浮かべた。
「八千代、申し訳ない。俺と別れてくれないか?」
昨日まで仲良く笑い合っていたのに、彼がなぜ突然こんなことを言い出すのか、八千代は混乱した。かろうじて、一言だけ口にした。
「……どうして?」
邦彦の言葉が八千代の胸に深く突き刺さる。八千代は震える手でカフェラテを喉に流し込んだ。しばらく沈黙が流れ、BGMが妙に耳につく。
「本当にごめん、八千代。他に好きな人ができたんだよ」
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