突然の別れ

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 それから八千代は壊れ始めた。カーテンを開けると日光が差し込んでくる。 「会社に行かなくては……」 そう思いつつも、起き上がることができなかった。会社には体調が悪い旨を伝え、八千代はほうけたようにベッドの中で過ごした。天井を見た瞬間、涙がとめどなく溢れ出てきた。吸う息と吐く息が乱れて、時々、息ができなくなる。  邦彦とは友人が設定した合コンで知り合った。隣の席で話も弾み、その場でアドレスを交換した。それから自然に恋人同士に移行した。二人は何の問題もなく、うまくいっていた。そう、あの時、あの場所で仁保が現れるまで……。  数日間、次から次へと鳴り出す電話を八千代は黙殺した。何も考えずにただ、ベッドに横になっていたかった。八千代は疲れ果てていた。まともなことに立ち向かっていく気力は最早、なかった。
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