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八千代は仁保が待っている邦彦の病室に戻る。
「助からないみたい……」
八千代の言葉に仁保は目を見開く。何も言えないような状態だった。八千代は邦彦の白い顔に視線を移した。
邦彦の眠りは時に浅くなり、度々、虚ろな目を開ける。でも目を開いても、ぼんやりと周囲をさまようだけだ。看護婦が来て計るたびに、どんどん熱が高くなっていく。やって来た医師に、
「感染症を起こしています。残念ながら、容態は悪化しています。抗生物質を処方します」
と言われ、八千代は身震いする。
「八千代、大丈夫?」
仁保がしっかりと八千代の肩を抱いた。
邦彦は高熱のために震え、訳のわからないうわ言を呟いた。
「お、俺が……やった。許して……くれ」
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