つくりものの終わる日

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つくりものの終わる日

A「『雪』だねぇ、きれいだねぇ」 B「おまえほんと呑気だよなぁ、これが積もり切ったら俺たち『終止』しちまうんだぜ?」 A「いいじゃない、だって本当にきれいなんだもん。まぁ確かに、この中に私たちの炉を停止するナノマシンが入ってるなんて知らなかったら、もっと楽しかっただろうけどね。もっとずっと見ていたいもの」 B「俺はやっぱり納得いかないけどなぁ。俺たちも含めて、この星のすべてが次世代異星移住用に作られた文明開発試験機構とはいえ、それが上手く行ったらいったん全部リセットされるなんて、なんかすごく無駄に思えるし」 A「いいじゃない、私たちリアロイドは充分頑張ったでしょう?なんにも、空気すら無かった岩と氷だけだったこの星を、ここまで立派に『始祖の星』の最盛期と同じ状態にまで作り上げることができたんだから。使命はまっとうしたのよ。これからは、本当の移住者たちの星になるの……」 B「そいつらも、ちゃんとこんな文明を作って仲良く平和にやっていけるのかな……。始祖の星じゃ争いが絶えなかったっていうじゃないか」 A「大丈夫よ、きっと……。……本当の移住者たちが来た後のこの星には、本当の雪が降るのかな」 B「どうかな……天文学的条件とか地形とか空気とかをどう構築するか次第だと思うけど……なんでだ?」 A「ん……こんなきれいなものを毎日見れたら、争いなんてする気も起きないんじゃないかなぁって」 B「あぁ……そうかもな……」 A「ねぇ……ちょっと、座ろっか……。なんだか眠くなってきちゃった……」 B「そうだな……もう雪が膝まで来てる」 A「少しだけ、寂しいかな……もう二人で遊んだりもできないんだよね……」 B「……充分一緒にいたさ……。それに……きっと、たぶん……全部何もかもリセットされても、俺たちがこの星にいた痕跡や記憶はどこかに残るんだ……。だから……俺たちは完全に……消えて無くなったりはしないんだよ……存在した証……二人の足跡は……ほら……雪の上にも残ってる……」 A「ふ、ふ……意外と……ロマンチスト……だったんだね……」 B「あぁ……最後の日……だから……かな……」 A「ん……ずっと……ありがとう……」 B「あぁ……俺の方こそ……ありがとう」 A「…………」 B「……おやすみ……きっと……俺たちの存在の証は……ずっと…………」
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