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会いたい。
はやくヒューゴの顔が見たい。
そんな気持ちを爆発させるように、地下鉄の階段を一気にかけ上がる。会食で断りきれなかったアルコールのせいで、だいぶ足元がふわふわしてる。地上に出、渋滞している交差点の信号を渡り、自転車と歩行者で混みあっている狭い歩道をフットワーク軽く走りぬける。
公園の入り口へは駅から徒歩5分、ダッシュで3分。目的地である待ち合わせ場所へはそこからさらに5~7分。
慣れないスーツは動きにくかったし、普段スニーカーばかりなので革靴のたてる音が大げさで恥ずかしい。
本当は一度自宅に戻って着替えてから来るつもりだったし、ヒューゴにもそう言ったのだ。
「……え、俺は逆に見てみたいけど」
「ええっ、なんで?」
「だって、そういうのも良多の一部っていうか。うん、見てみたいよ」
ヒューゴがやけに力強く言ったので、拍子抜けした。
スーツが年齢差を強調するみたいで気がひけたのは須美だけで、ヒューゴはそんな小さいことをいちいち気にしたりしなかった。須美はその時のやりとりを思い出し、つい微笑む。
まったくかっこいいんだ、ヒューゴは。
年下とは思えない包容力だ。
待ち合わせ場所の公園は、都内屈指の広さと設備の充実を誇るスポーツの聖地だった。様々なイベントのメッカで、観光地で、地元住民の憩いの場だ。
園内はランニングコースとサイクリングコースが設けられ、スタジアムと野球場、サッカー場に屋内競技場があり、児童公園が三つ、プールは改装中で、広場ではフリマや骨董市や様々なフェスが頻繁に開催される。
須美良多(すみりょうた)の場合、それらのほとんどを利用したことはない。そもそもスポーツや運動に縁がない。
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