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須美は頭をかかえた。
これはジェネレーションギャップというやつか。若い人間は何を考えているかわからない。
こちらは、少しでも性的マイノリティの少年の助けになろうとして交際をOKしたというのに、全く見当違いだったというわけか。
笑い出した須美を見て、ヒューゴは意味がわからないながらも、にっこりした。
「もうちょっとで親が帰ってくると思うから、そしたら紹介するね」
「ごめん、それも何言ってるのかわからない」
こんな留守中に、大事な一人息子のもとによくわからない大人の男が勝手に家に入って、しかも息子の服を着ているのだ。第一印象最悪すぎるだろう。それがわからないなんて、頭がいいくせに、なんてこの子は子どもなんだろう。
ドラム式洗濯機を無理やりとめて、自分の服を回収し、ぬれた靴に足をつっこむ。
「ヒューゴの服、借りてくね、ごめんね」
「良多」
「!」
顔を上げるとキスされた。
しかし、焦っている須美に異議を唱える余裕はない。逃げるようにヒューゴの家を出る。
せんせいには、愛していたことと、ありがとうをちゃんと伝えようと思った。そしてさよならも。それから杉山さんにこれまでの礼を言う。
引っ越し先はどこでもいいが公園のそばがいいと決めていた。
その時はそうできると本気で信じていた。
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