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「俺、『児童』だから、手とかつないでも違和感ないでしょ」
須美のリアクションにもすました顔で言う。動揺したのは須美の方だ。スーツとランドセル、大人と子ども、確かに違和感はないけれど、すごくドキドキする。
「こんなでっかい児童嫌だ」と照れ隠しに笑うと、「えー」と言って、すぐ手を放し、ランドセルを大きな紙袋にしまった。しまった。言わなければよかった。
「今日塾何時?」
「5時。まだ時間ある……あ、でも一回家帰ってこれ置いてこないと。てかもう使わないから捨ててもいいんだけど」
そう言って捨てるしぐさをするので、大事な思い出じゃん、ご両親が泣くよ、と言った。
「中学楽しいといいね」
「あー、まあ学費高いらしいからがんばるっすよ」
「ほんとヒューゴはすごいよね」
ヒューゴが合格した中学は、私立の難関エリート校だった。見た目はガリ勉タイプじゃないし(ストリート系小僧、という感じだ)、ひょうひょうとしているが、負けず嫌いの努力家で、しっかり結果を出す。
恵まれた環境で愛されて育てられ、日の当たる道を歩んでいるヒューゴをとてもまぶしく思う。
ひるがえって、自分がヒューゴくらいの年齢の時は何をして何を考えていただろうか? 確か己の性指向について悩み、それを悟られないようびくびくしていた。ヒューゴはそうじゃないんだろうか。聞けないけど。
「照れるからそんな風に褒めないでくださーい」
ヒューゴはけらけら笑いながら言う。ヒューゴとのデートはいつもとても楽しい。
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