7、公園へ

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「良多、こっち!」  改札から勢いよく階段を上がってくるのをみつけ、手を振る。待ち合わせを5分すぎていた。数えきれないほど待ち合わせをしてきたが、こんなに焦ってやってくるところを見るのは初めてかもしれなかった。  スーツがとても似合っていて、目を引く。待ち合わせは待たせるより待つほうが断然いい。なぜなら、ヒューゴを探す良多が、こちらを発見してぱっと嬉しそうな顔になる瞬間を見ることができるからだ。そして嬉しさを隠しきれないまま、まっすぐこちらに向かってくる良多に、周囲への優越感が半端ないからだ。  例にもれず、良多はヒューゴに気づくと表情に喜びの光があふれる。それを見ると年上の美しい人を恋人にもつ不安が、どんな時も消えてなくなる。走ってきたことをとりつくろうよう、良多はスピードをおとし歩く。照れくさいのを隠すように下を向き、それでも迷いのない足取りでヒューゴのところにやってくる。すれ違いざま何人かが良多のことを盗み見する。それに全く気づかない様子でヒューゴのもとへ来た良多は、開口一番に言った。 「帰っていい?」  会うなり突然これだ。まだ息をきらしている良多に、苦笑しつつも訳を聞いてみる。 「何があった?」
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