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ヒューゴは、今はパニックになっている良多が、自分の両親を前にするととたんによそゆきの顔になるのが想像できた。ヒューゴの強引さをよく知っている父や母が、何かと恐縮するのに対し、ただ穏やかに微笑む。目に浮かぶのはすぐの未来だった。
「ヒューゴ、何考えてる」
ニヤニヤしているのがばれた。良多は上目遣いで不審げにヒューゴを見る。この顔も好き。俺の前だけでくるくると表情を変える。愚痴や不安を言う。怒ったり笑ったりする。最初からそうではなかった。二人で何年も歩いてきた結果、今の関係がある。良多が、こんな隙だらけの顔を見せるのは自分に対してだけだ。そんな風に思うのは、決してうぬぼれすぎではない。
「昨夜の良多さんのすごいエロい姿考えてました」
緊張をほぐそうとしているこちらの意図がわかったのだろう。きょとんとしたのち、「バカ」と言って、手土産が入った紙袋を軽くぶつけられた。
行こうと言って、良多はヒューゴの先にたち、足早に歩きだす。ヒューゴは追いかけ横に並んだ。歩幅をあわせる。
良多が小声で何か言ったのでおおげさに聞き返す。
「え? 何? 今『ランドセル』って言った?」
「別に何も」
よそゆきのすまし顔でとぼける。かわいい。キスしたい。
『この前までランドセルしょってたくせに』と実は聞こえていた。
「良多、スーツかっこいいよ。今も昔も」
公園の入り口へは駅から徒歩5分、ダッシュで3分。
目的地であるヒューゴの実家はそこからまだ先、公園に隣接する大きなマンションで、木陰で一回キスをしたとしても、約束の二時には余裕で間に合う。
end
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