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会社一階のエレベーターホールで肩を叩かれた翼。振り向くと目黒がいて
「おはよう」
と爽やかな笑顔で言われた。
「お、おはようございます。チーム長」
いつもと同じような朝なのに、何かが違う。
翼は指先で前髪を整えた。
隣に立った目黒を見上げる。相変わらずシャープな顎で高い鼻筋が綺麗な横顔を作り出していた。
ごくりと唾を飲み込んで翼は胸を押さえた。
目の前にあるエレベーターの長方形のホールランプが点灯して、まもなく上へ行くエレベーターが来ると合図した。
そのランプへ視線を移す目黒を翼は、まだ見つめていた。
「なんだ?」
「え?」
「なんか話でもあるのか?」
「私がですか?え、なんでです?」
「見てるだろ、さっきからずっと」
「え、何を?」
目黒が翼へ顔を向けた。
「とぼけるな。ずっと俺を見てる。何かいいたいのなら言えよ。気になるだろう」
「わ、私が、チーム長を見てましたか?」
「ああ、お前からの視線を痛いほど感じたが、まさか見てるという自覚がないのか?」
上へ行くエレベーターが来て、他の人達と一緒に乗り込んだ。
エレベーター内は、ほぼ満員でみんな無言で階数表示を眺めている。
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