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先に会議室を出た翼は、廊下をぼうっとしながら歩いて営業部へ向かった。
指先で自分の唇に触れてみる。
自分の唇であって、自分のではないような感じがしていた。
今もまた、会議室での目黒とのキスが頭に浮かんできてしまう。
強く引き寄せられた体、目黒の手の感覚がまだ腕に残っている。強引に深く進みそうなキスは触れるだけの紳士的なものだったと言える。
そんな軽めなキスだったのに、頭も体もぼんやりしていた。
先ほど会議室で、離れていった目黒の唇を翼は、ぼんやりと見つめた。
名残惜しくなるようなキスの後で
「続きは、また今度な」
翼の髪を優しく撫でながら目黒がいったのだ。
思い返すとまた体が火照ったように熱くなる。
また今度っていつよ!
今夜?
それとも明日?
それとも、もっと先だろうか。
ぶるぶるっと頭を横に振ってから翼は、顔を上げた。
視線の先に朝からは決して見たくなかった顔があり翼は、げんなりしてしまった。
仏頂面した徹が腕組みして
「朝から会議室でなにしてんだよ」
偉そうに言ってきた。
「な、何って?」
確かに朝から会議室でするようなことではないことをしてしまった手前、あまり強くは出られない。
「2人が入ってくのを見てたんだよ」
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