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期待されたユニークな必殺技も何一つ保有していない。
一応見所はあるのだが、総合的に考えれば『廃棄妥当』案件なのである。
白衣で身を固めた冷徹なる研究者たちは、そのように結論付けた。
ーー上には事後報告するとしよう。さっさと解体してしまうか。
ーーそうだな。コイツは生かしておくだけ無駄でしかない。
2人のうち1人がガラス管の方へと迫る。
フォグルは動物の観察でもするように、『処刑人』の動きを事細かに眺めた。
死を目前にしても他人事のままである。
余りにも無機質な視線は白衣の男に驚きを与え、そして体を退けぞらせた。
ーーなんだコイツ。気味が悪いな。
研究員は顔をしかめつつ手を止めた。
しかし結論は覆る事無く、処刑の準備が着々と進められる。
誤作動防止用の蓋が開けられて真っ赤なボタンが露になる。
それは非常時に使用されるものであり、中の生物を死に至らしめる造りとなっている。
これは強力な戦闘力を持つ『怪人』を確実に仕留めるための仕掛けなのだ。
そして今まさに、死神の鎌が振り下ろされようとしたのだが……。
ーー諸君、経過はどうかね?
ーーこ、これは総統閣下!
新たな男の登場により、寸でのところで処刑は中断された。
室内の研究員たちは総員起立し、大袈裟な敬礼で体を硬直させた。
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