第1話 霧の魔人

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期待されたユニークな必殺技も何一つ保有していない。 一応見所はあるのだが、総合的に考えれば『廃棄妥当』案件なのである。 白衣で身を固めた冷徹なる研究者たちは、そのように結論付けた。 ーー上には事後報告するとしよう。さっさと解体してしまうか。 ーーそうだな。コイツは生かしておくだけ無駄でしかない。 2人のうち1人がガラス管の方へと迫る。 フォグルは動物の観察でもするように、『処刑人』の動きを事細かに眺めた。 死を目前にしても他人事のままである。 余りにも無機質な視線は白衣の男に驚きを与え、そして体を退けぞらせた。 ーーなんだコイツ。気味が悪いな。 研究員は顔をしかめつつ手を止めた。 しかし結論は覆る事無く、処刑の準備が着々と進められる。 誤作動防止用の蓋が開けられて真っ赤なボタンが露になる。 それは非常時に使用されるものであり、中の生物を死に至らしめる造りとなっている。 これは強力な戦闘力を持つ『怪人』を確実に仕留めるための仕掛けなのだ。 そして今まさに、死神の鎌が振り下ろされようとしたのだが……。 ーー諸君、経過はどうかね? ーーこ、これは総統閣下! 新たな男の登場により、寸でのところで処刑は中断された。 室内の研究員たちは総員起立し、大袈裟な敬礼で体を硬直させた。     
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