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ながら作業の許される状況では無くなったのである。
ーーそろそろ外に出してやろうと思っていたところだ。戦力値は?
ーーSR値は350弱。攻撃的な特殊能力もありません。
ーーふむ、なるほどなぁ。
ーー恐れながら申し上げますと、今回は失敗かと思われます。
総統と呼ばれた男がガラス管へ向かってゆっくりと歩み寄る。
フォグルの目には30代とおぼしき長髪の男が写った。
漆黒のマントで身を包んでいるために体格までは分からない。
中身は華奢だろうと、何となく察しだけをつけた。
ーーふむふむ。この『霧の魔人』は特別製だ。保育器では覚醒させる事は難しいのやもしれん。
ーー力及ばず、申し訳ございません。
ーー責めているのではない。流石の私も予想だにしなかった事だ。
黒マントの男が慣れた手つきで機器を操作した。
すると、けたたましい警告音と共に、フォグルを包んでいた液体が排水された。
しばらくするとガラス管もスライドするようにして床下まで下がる。
自由だ。
処刑から一転、地に降り立つ自由を授かったのだ。
遂には口元の呼吸器さえも外され、フォグルを繋ぎ止めるものの全てが無くなった。
「あの、僕は……」
初めて外界で発した声は掠れていた。
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