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しかもどちらも必殺の太刀筋である。
店長は女子大生に折り重なるようにして、その場に倒れ込んだ。
「ふぉ、フォグルくん……」
しぶとい。
だが、世の中とは常に残酷なもの。
まだ若い2人は、人生とは苦痛の方が遥かに多いことを、この瞬間まで知らなかったのである。
「フォグたぁん、遅いよぉー!」
珍しくメルが出迎えに来た。
本来であれば表に停めた軽トラの中で待っているのだが、よりにもよってこのタイミングで現れたのである。
乙女の勘、いわゆる女子力の賜物と言えよう。
「すみませんメルさん。少し立ち話をしてしまいました」
「まぁ良いけどね。じゃあ車停めてるから、早く行こうよ」
仲睦まじく去り行く背中を、どちらも地面に伏したまま見送った。
瞬く間に視界が滲む。
涙が頬を伝うと、初冬の寒さが身に凍みた。
結果的に言えば怪人と恋仲にならない方が幸せである。
しかし、彼女たちがフォグルの正体に気付く事は無いのである。
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