第18話 資金の投入先

1/8
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ

第18話 資金の投入先

フォグルの出稼ぎは順調である。 毎日のように女性陣が攻め寄せる場面こそあったものの、常に闘牛士(マタドール)のような華麗さでかわし続けた。 そうやって迎えた給料日。 組織の口座に振り込まれるので、フォグルの手元には一銭も入りはしないが、給与明細は直接手渡される。 手取りは交通費込みで14万2000円。 独立して生活するには窮屈な額面であるが、幸いにも拠点暮らしである。 給与額について不安を抱く心配はない。 それどころか『末端の人たちの暮らしが改善されるかもしれない』という仄かな期待すら胸に宿る。 仕事あがりに、いつもの猛追を撃退しながら。 「フォグルくん。バイト代が入った事だし、これからパスタでも食べに……」 「結構です」 「ヘグッ!」 「フォグル君。もし良かったら今晩は一緒にディナーでも……」 「結構です」 「カハァッ!」 歩調を乱すことなく、言葉による斬撃を繰り出した。 倒れ方から見るに、女子大生は袈裟斬り、店長は胴薙ぎといったところか。 まるで時代劇のやられ役のように、どちらも美しく倒れる。 フォグルは特に後処理を気遣うことなく、迎えの軽トラに乗り込んだ。 「大義だった。よくぞ立派に勤めあげたな」 車内でメルが労った。     
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!