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第18話 資金の投入先
フォグルの出稼ぎは順調である。
毎日のように女性陣が攻め寄せる場面こそあったものの、常に闘牛士(マタドール)のような華麗さでかわし続けた。
そうやって迎えた給料日。
組織の口座に振り込まれるので、フォグルの手元には一銭も入りはしないが、給与明細は直接手渡される。
手取りは交通費込みで14万2000円。
独立して生活するには窮屈な額面であるが、幸いにも拠点暮らしである。
給与額について不安を抱く心配はない。
それどころか『末端の人たちの暮らしが改善されるかもしれない』という仄かな期待すら胸に宿る。
仕事あがりに、いつもの猛追を撃退しながら。
「フォグルくん。バイト代が入った事だし、これからパスタでも食べに……」
「結構です」
「ヘグッ!」
「フォグル君。もし良かったら今晩は一緒にディナーでも……」
「結構です」
「カハァッ!」
歩調を乱すことなく、言葉による斬撃を繰り出した。
倒れ方から見るに、女子大生は袈裟斬り、店長は胴薙ぎといったところか。
まるで時代劇のやられ役のように、どちらも美しく倒れる。
フォグルは特に後処理を気遣うことなく、迎えの軽トラに乗り込んだ。
「大義だった。よくぞ立派に勤めあげたな」
車内でメルが労った。
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